これは、十九世紀後半のフランス、退廃と悪徳と拝金主義がもてはやされた時代を生きた、ある一人の高級娼婦の物語です。
分類としては歴史小説になりますが、非常に読みやすく、それでいて重厚さを失わない絶妙な仕上がりの本作。
ただし、その物語は彼女自身が語るのではなく、彼女とかかわった人々が語ります。
立場も考え方も様々な語り部たちは鏡となって彼女を映しますが、その鏡は必ず曇っている。
あるものは同情ゆえに、あるものは軽蔑ゆえに、そして、あるものは愛ゆえに。
彼女を映す最後の鏡は彼女に何を見出すのか。
ぜひお確かめください。