人は誰でも年をとる。
人生には侭ならぬこともある。
そして迷宮に人が潜るとき、そこにも侭ならぬ現実がある。
この物語は、迷宮に潜る老いた猟師が主役である。
老猟師は震災で息子夫婦を失い、原発で故郷を失い、千葉県に孫と避難する羽目になったのだ。
現実世界に迷宮が出現した世界の中で、生活のため、暇を持て余して、老犬を友として迷宮に潜り続ける。
命がけの迷宮に挑み続けるという日常は激動の中にあるようで、老いた猟師にとっては狩猟であり、人生への諦観と猟師としての誇りを刺激される場所でもある。
多くの人の人生を飲み込む、不条理な迷宮という存在。
その不条理に向き合う人間には、人生の不条理を体験し飲み込んできた老いた猟師のような人間性が必要とされるのかもしれない。
この物語を読むと不安になる。
人生の後半を否応なく意識させられる。
東京迷宮には、それだけの力がある。